当連盟の活動情報についてお知らせします。

活動情報

2021.01.20

大学入試科目「情報」新設への検討に寄せて
―日本IT団体連盟は国民全体のIT活用能力の向上に期待します―

 IT産業に関わる日本最大級のIT団体の連合体「一般社団法人 日本IT団体連盟」(東京都港区、代表理事 兼 会長:川邊 健太郎、以下、日本IT団体連盟)は、大学入学試験科目の「情報」新設への期待を表明いたします。先般、2025年からの大学入学共通テストにおいて、試験教科に「情報」を新設する検討案がまとまったとの報道がありました。また2020年10月、文部科学省が所管する独立行政法人大学入試センターより、新学習指導要領に対応した2025年度(令和7年度)からの大学入学共通テストの出題教科・科目等について一定の方向性の整理を行った旨が報告されています。

    こうした状況をうけ、日本IT団体連盟としてすべての国民のITに関する資質の向上と、デジタルトランスフォーメーションによる持続可能な経済発展を目指し、更なる情報教育の推進を期待します。

    予てより我が国は諸外国に比べ、情報教育に後れを取っていることが指摘されてきました。生活のあらゆる局面においてデジタルが浸透した今日において、国民全体のITの資質向上は喫緊の課題です。OECDの調査によると、日本の学校教育におけるITの利活用は加盟国の間でも最下位に位置しています。

    アメリカでは、2015年よりComputer Science for Allという施策により大規模な予算を投じ、初等・中等教育においてコンピュータサイエンス教育を必須とし、IT教育支援が展開されてきました。欧州では、2007年よりITに関する資質の養成が成長と雇用に直結することを踏まえ、e-skillsとして戦略化し、2013年にはデジタル市場経済戦略のもとに、国際的な競争力向上の手段として、IT人材育成とITによる教育の高度化、学習者のITスキル向上を位置づけています。その一環として欧州域のすべての市民が持つべきデジタルスキルが2013年よりDigital Competence Framework for Citizensとして共通フレームワーク化され、これを踏まえ、欧州域内のメンバー国は情報教育カリキュラムを策定しています。

    日本IT団体連盟は、我が国の高等学校における「情報Ⅰ」の必履修化、およびそれに伴い、「情報」を大学入試教科に入れるという検討が始まったことについて、歓迎するばかりです。しかしながら、入試で「情報」を受験するのは、同一年齢人口の中でも国公立に進むごく一部にとどまることが予想されることから、高校の情報教育において、入学試験のための学習の有無を問わず包括的に情報を学び基礎的なITの知識を身に付けることを強く期待します。さらに、すべての国民のITリテラシー向上のためには、技術動向や環境変化等を踏まえ、内容が適宜改定されることを前提に、ITパスポート試験の合格を推進すべきです。またITパスポート試験が蓄積してきた経験は、情報の試験において有効に活用されるべきです。

    新規科目設置に向け関係者への情報提供などのご努力を続けてくださっているところ、私ども日本IT団体連盟は、技術・知見の両面で、全面的に協力し、国民の情報活用能力向上施策に対し、サポートしていく用意があります。

全文

以上

■一般社団法人 日本IT団体連盟について
・名称:一般社団法人 日本IT団体連盟(英語名:ITrenmei、Information Technology Federation of Japan)
・設立:2016年7月22日
・代表理事 兼 会長:川邊 健太郎
・ホームページ:https://www.itrenmei.jp 

<本件に関する報道関係の方のお問い合わせ先>
日本IT団体連盟 IT教育・人材育成委員会 事務局
メールアドレス:education_workforce@itrenmei.jp

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ⅰ 大学入試センター 「令和7年度大学入学者選抜からの大学入学共通テストの出題教科・科目の検討状況について」(2020年10月23日)https://www.dnc.ac.jp/news_all/info.html

ⅱ 文部科学省編集の文部科学広報 第249号(2020年8月号)の特集「教育の情報化 ~GIGAスクール構想の実現に向けて~」に、わが国の教育におけるICT利活用の現状について触れられている。これによると、経済協力開発機構(OECD)が2018年度に実施した「生徒の学習達成度調査(PISA)」において、わが国はコンピュータを使って宿題をする頻度がOECD加盟国中最下位であることを言及している。また、同じくOECDの「国際教員指導環境調査(TALIS)」の結果によれば、わが国の教員が学校で児童生徒に課題や学級での活動に ICTを活用させる割合は20%に至っておらず,TALIS参加国48か国の中で最下位レベルであることを示している。
https://www.koho2.mext.go.jp/249/html5.html#page=10

ⅲ 「情報Ⅰ」は、平成 30 年改訂高等学校学習指導要領から必履修となる科目。「情報社会の問題解決」「コミュニケーションと情報デザイン」「コンピュータとプログラミング」「情報通信ネットワークとデータの活用」の4つの領域から成る。

ⅳ ITパスポート試験とは、ITを利活用するすべての社会人・これから社会人となる学生が備えておくべきITに関する基礎的な知識が証明できる国家試験。コンピュータを利用して実施する試験方式(CBT)を採用している。シラバスや出題範囲は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取組みの進展等に関する近年の技術動向や環境変化も踏まえて昨年9月に改定されており、現実に最も則していると考えられる。なお、内容が時代変化に追従している事については毎年精査し,情報処理推進機構担当部署に進言するなど、日本IT団体連盟としても積極的に協力する。
情報処理推進機構「ITパスポート試験における出題範囲・シラバスの一部改訂について(数理・データサイエンス・AI(リテラシーレベル)モデルカリキュラムへの対応など)」2020年9月14日掲載