活動情報
2020.09.16
菅義偉新政権に望む
令和2年9月16日
一般社団法人 日本 IT 団体連盟
会長 川邊 健太郎
一寸先は闇という言葉がある。コロナ禍で疲弊している多くの国民、パンデミックの中で行動の制限を余儀なくされている世界中の人々が、不安を胸に抱きながら不透明感の中で暮らしている。こうした中、わが国では先の安倍政権を引き継いで菅新政権が発足した。政治の空白を避け、新型コロナの感染拡大防止に全力をあげることを望むとともに、新総理の粘り強い意思の下、デジタル化をカギとした行政の改革と効率化、「縦割り打破なくして日本再生なし」を断行し、新しい日本の夜明けに備えることを要望する。
コロナ禍以前の日本の社会は、目に見えるもの、手で触れるものに重きを置いた社会だったのではないだろうか。有形の建造物、有形の製造物、いわゆる有形固定資産を増やすことに主眼が置かれ、国民はそれを求めてきた。そして今、コロナ禍のさなかにおいては、目に見えないウイルスを相手に手も足も出ずに、禍が過ぎるまで首をすくめてじっと待っている状態だ。社会のデジタル化の遅れは、特別定額給付金の支給において顕著だった。申請書の受付とその目視確認をベースに業務を組むのだからスピードはあがらないし、コストがかかった。ソフトウエアという無形固定資産への投資が行われてこなかった結果と言わざるを得ない。
IT連盟は 、デジタル庁の新設に期待するとともにIT人材の供給に協力する。日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)の基盤として、行政のデジタル化を官民でやり遂げたい。
オンライン診療やオンライン教育の恒久化も支持する。しかしながら、これらの施策が本当の意味での社会のデジタル化になっていなければ、われわれ国民には習慣を変更することへのストレスがかかるばかりだ。元に戻してほしいという声が、すぐに湧き上がってくるだろう。便利さが向上しないデジタル化は、表面的にデジタルになっていても本質的なデジタル化にはならないことを、しっかり認識すべきだ。デジタル化とは付加価値の創出であり、効率化であり、スピードアップに他ならない。
無形の資産である品質の高いソフトウエアを作るには方法がある。アジャイル手法はその一つだ。失敗を恐れずに、β版であっても検証を行った上で市場に投入する。データをもとに失敗を分析し、すばやく改善する。ユーザーの声を聴いて、絶え間なく新機能の追加を繰り返す。これが政府にできるだろうか。もしできないのであれば、大きな方向性や守るべき価値を政府が示し、ソフトウエアは民間で作るというのも、一つの方法ではないだろうか。例えば、マイナンバーカードの普及に苦労するなら、マイナンバーアプリを並行して提供することが考えられる。アプリをスマホにインストールし、有効化するための手続きをオンラインで行うことも考えたい。
民間においては、ソフトウエアなどの無形固定資産に、特別償却や税額控除などの優遇税制を適用することで、無形固定資産へのシフトが進み、DXが加速する。サイバーセキュリティの強化も忘れてはならない視点だ。古いシステムの長期利用や、「PPAP*」のような古い考え方は早々に淘汰する必要がある。
日本IT団体連盟は新政権と緊密に連携し、マイナンバーカードをカギに行政のデジタル化施策を全面的に支援する。新たな生活様式をITで支え、コロナ禍に打ち勝ち、活力ある地方を創り、経済復興に貢献する。新政権への主要政策要望は以下の通り。